核燃焼プラズマにおいては、イオンサイクロトロン放射(ICE)と呼ばれる特徴的な高周波揺動がイオンサイクロトロン周波数帯(ICRF)に観測される。本研究の最大の特長は、励起波動の波数を実験的に決定し、分散関係を導出できることである。平成21年度には、負磁気シアと呼ばれ電流密度が中心部で小さくなる特徴的な放電において、中性粒子(NB)入射により励起される重水素に起因するICE(D)の2倍高調波信号のすぐ低周波数側で、比較的鋭いピークを持つ揺動に着目して解析を進めた。これまでに、NBによるICE(D)とその高調波は、トロイダル方向に波数を持たず、核融合反応生成イオンに起因するFP-ICEは有限な波数を持つこと、また、FP-ICEは最外殻磁気面付近のサイクロトロン周波数に比べて低い周波数を持つことが明らかとなっている。詳細な分散関係の測定から、この比較的鋭い周波数ピークを持った揺動を核融合反応生成水素に起因するICE(H)と初めて同定した。また、ICE(H)の分散関係を明らかとするため、複数個のアンテナ素片を用いた波数の詳細測定を行い、JET等の核燃焼プラズマ実験で報告されているアルベン速波に属することを明らかとした。ICE(H)は負磁気シア放電のみで観測されており、その励起機構についてはこれまでのところ解明されてはいない。ICE(H)は比較的密度の高い放電で観測されるため、ICE(^3He)の基本周波数と同時に観測されることがなく、ICE(^3He)の2倍の高調波も消えてしまうことが多いため、Dプラズマ中での速波励起の密度依存性だけでは説明できないことが明らかとなった。日本原子力研究開発機構で開発された粒子追跡(EPOC)コードを用いて、中心付近で生成されたHイオンの軌道計算に着手し初期的結果を得ることができた。
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