研究課題
核燃焼プラズマ中のイオン温度分布計測法の一つとして協同イオントムソン散乱があり、従来から注目され研究がすすめられてきたものである。近年の電子サイクロトロン波加熱技術の進展により、大電力でコヒーレントな発振源としてのジャイロトロンがその性能を上げ安定に運用されるようになったことで実用性が高まって来た。特に、核融合科学研究所のLHDにおいては、プラズマ生成および加熱に用いられてきた電子サイクロトロン加熱装置は高性能の計測装置としての機能も兼ね備えている。平成20年度には、バルクイオン温度の高精度計測のために、固定局部発振器を持ったヘテロダイン検波方式の8チャンネルの受信器を整備することにより、ジャイロトロンを用いた協同イオントムソン散乱計測の開発とこれを用いた、LHDの電子サイクロトロン波加熱により生成・維持されたプラズマにおける散乱計測を試みた。1. 受信システムの開発には、(1)狭帯域阻止フィルターの開発、(2)不要モード阻止法の開発(3)イオン温度計測における最適なフィルターの組み合わせ検討. (4)総合受信システムの構築と試験が含まれており、(1)は、受信主波管壁に小結合孔で結合させた24個の空洞共振器を並べたノッチフィルターを二段重ねで用いることで、中心周波数77GHz近辺でバンド幅400MHz減衰率120dBの性能を持ち、実用に耐える狭阻止帯域フィルターを構成した。(2)は、ミリ波導波管型ピンスイッチにジャイロトロンの変調信号を処理したオンオフ信号を印加することで、不要モードが発振するジャイロトロンアノード電圧の過渡期に受信信号の減衰を行う手法を開発した。(3)については、イオン温度1から5keV程度の実際の散乱受信配位から予想される散乱スペクトルを評価する計算コードを開発し、このスペクトルを実験的に評価するために必要と考えられる中心周波数から上下0.5-1.1GHzをバルクイオン温度評価用、1.3-2.3GHzを高エネルギーイオン評価用と位置づけてフィルターの選択を行った。(4)に関しては、個々のコンポーネント及び、受信器として組み合わせた総合システムとして、ミリ波帯および中間周波数のマイクロ波周波数帯をベクトルネットワークアナライザーを用いて評価するとともに、液体窒素と室温の黒体輻射の差から全体感度の校正をおこなった。2. プラズマからの散乱信号の受信上記で開発した受信器を用いて、サイクロトロン波加熱を用いて生成・維持した電子・イオン温度1keV、密度1×10^<19>m^<-3>の : 対して散乱計測を試み、散乱信号と考えられる信号の受信に成功した。現在、取得したデータの解析をすすめおり、平成21年度は受信チャンネルの拡充をはかって、イオン温度の正確な評価をさらに受信器の整備を行う。
すべて 2008
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