研究概要 |
国際熱核融合実験炉(ITER)において生成されるアルファ粒子の空間・速度分布を計測するために、高密度のHe以上の重い粒子のビームを燃焼プラズマ中に入射するシステムが考えられている。入射された中性ヘリウム(He^0)粒子はアルファ粒子と荷電交換反応を行い、その際アルファ粒午は高エネルギーのHe^0に変換され、エネルギーアナライザーにより計測される。He^0ビーム生成法の一つとして、イオン源でヘリウム水素イオン(HeH^+)を生成し1次ビームとして取り出した後、HeH^+成分のみを磁場で分離し、1MeV程度まで加速する。その後、中性化セルでHe^0に変換しプラズマ中に入射することが考えられている。産総研では、実機レベルのイオン源を用いてHeH^+がより多く生成される条件を300Vのビームを用いて前年度までに見出している。そこで、エネルギー20kV程度の全ビームからHeH^+の電流成分のみを電磁石で分離し、電流の割合を計測するシステムの設計・製作・実験を行った。その結果、電流計測部におけるHeH^+ビームの割合は全ビーム成分(H^+,H_2^+,H_3^+,H_e^+,HeH^+)の約0.5%程度である事が見出された。20kVの領域では、HeH^+ビームがチャンバー内に存在するガスにより解離されている可能性がある。ITERでの使用に際しては一桁程度割合を高める必要が有る。以上の結果から、1keV程度で混合イオンビームをイオン源から引き出し、その後にHeH^+成分を分離しかつ1MeV程度まで加速するシステムがより実用化の可能性が高いことを見出した。本研究課題では、数keV程度の領域においてHeH^+ビーム電流の割合を質量分析器を用いて計測し、ITERにおいて必要とされる電流密度が得られるかを評価する。今年度は、イオンビームシステムの整備を行うとともに混合イオンビームの引き出し実験に成功した。次年度は、質量分析器の整備と電流計測を行う予定となっている。
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