集束イオンビーム(FIB)により先鋭化した金探針の付いたAFMセンサー(水晶振動子)を作製して非接触AFMで用い、探針・試料間にパルス電圧を印可することによって、探針先端原子の電界蒸発を促し試料表面上への文字パターンや金ナノ細線の描画(AFMリソグラフィー)を行った。独自に開発したナノレベルで鋭利な金探針を距離制御性に優れ高分解能を有する非接触AFMで制御してAFMリソグラフィーに成功した点で意義深い。これまでのAFMリソグラフィーでは、曲率半径50〜100nm程度の金属被覆Si探針を用いており、描画線幅も50nm程度が限界だったのに対し、本研究で、先端半径12nm程度の金探針のついたAFMセンサーを非接触AFMで制御したことにより、線幅20〜30nm程度の金属細線の描画が可能となった。また、この高精度AFMリソグラフィー手法は、半導体デバイスの導線など様々な応用が考えられるが、中でもナノ構造の電気伝導測定に威力を発揮すると考えている。これまでに代表的なナノ構造の一例としてカーボンナノチューブをSi表面上に分散させたり、シャドーマスク蒸着によリマクロな金属電極を作製したりして、電気伝導測定の準備を進めてきた。ナノギャップ作製の技術的難解さやbreak-junktiom法の再現性の低さなどから、ナノ構造の中でも特に単一分子の電気伝導測定結果については異なる実験間での値がまちまちであり、加えて理論値と実験値が異なるのが現状である。本研究により高精度AFMリソグラフィー手法を確立し、試料表面上で分子・マクロ金属電極を結ぶことができれば、新たな電気伝導測定手法を確立することができ、分子エレクトロニクス発展への手がかりとなると考えている。
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