研究概要 |
本研究は1個の分子を金属電極間に架橋させた「ナノリンク分子」を形成し, その高バイアス/高電流下における不安定化現象を実験的に考究するとともに, 破断電圧/電流のデータベースを構築することを目的としている. 平成20年度は首都大学東京の杉浦先生との共同により新規分子の試料を提供いただき, 主にコンダクタンス測定を中心に分子架橋実験を行った. 1. 杉浦先生からチオアミド基をリンカやとする数種類の分子を提供いただき, 金電極に架橋してコンダクタシス測定を行うことを試みた. チオアミド基の場合には分子がチオール基とアミノ基の二つで金電極と結合することが予想され, より強い結合と高いコンダクタンスが期待できる. 問題点は溶媒としてDMF, THFなどを使用する点にあり, これらの溶媒はMCBJ電極ワイヤーの固定に使用するエポキシ系接着剤を溶出させる可能性がある. このため無機系の接着剤を使用しているが測定の成功率は余り高くは無い. 現在のところコンダクタンスヒストグラムに明瞭なピークは観測されていないが, 0.005GO付近に小さな構造が現れている. このコンダクタンスは類似の構造を有するBDMT分子のコンダクタンスよりも一桁高く, チオアミド基が優れたリンカーであることを示唆している. 2. オクタンジチオールの破断電圧測定に向けてオクタンジチオールの金電極への架橋とコンダクタンス測定を行っている. しかしコンダクタンスヒストグラムは平坦で報告されているオクタンジチオールのコンダクタンス値にピークが現れていない。まだ測定回数が少ないため, 今後回数を増やしてオクタンジチオールのコンダクタンスを確認し, その状態に架橋を保持することを試みる予定である.
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