研究概要 |
分子を用いた電子素子の開発する際、従来の電子回路を構成している素子、例えば抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ等の役割を分子に担わせることを目標とすれば、その分子設計が容易となる。電子回路を構築する際、電子への摂動を与える素子の重要性は言うまでも無いが、電子を輸送する配線は、回路全体を作り上げる基盤技術として必要不可欠である。本研究では、実用に耐え得る配線素子(分子ワイヤー)の実現を目指し、両末端にポルフィリンを連結させたオリゴアセチレンの合成と機能評価を行った。具体的には、電極接合部位としてチオカルボニル基を用い、当該分野の標準化合物として世界中で用いられている1,4-ベンゼンヂチオールに匹敵する伝導度を有する分子の合成に成功している。具体的には、チオアミド、セレノアミド、チオセミカルバジドに注目し、これらをベンゼンの1位と4位に導入した化合物の合成を行った。これらの構造を評価した後、Break Junction法により単分子電気伝導度の測定を行った結果、極めて高い伝導を示すことが明らかになった。今回得られた化合物は実験室雰囲気下で著しく安定であり、1,4-ベンゼンヂチオールが有していた欠点をすべて克服することにも成功している。
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