我々これまでに、巨大共役π電子系およびそれらの超分子会合体を構築して、その構造と機能を研究してきた。本課題においては、申請者がこれまで調べてこなかった分子と電極の接合を、申請者の化合物を使って調べることを目的とした。具体的には、金電極と硫黄原子との化学結合をより強固で指向性をもったものとするために、ジチオラートをアンカー部位にもつπドナーと金電極接合系分子の設計・合成を行った。さらに参照化合物の合成も行った。中央のベンゼン環には、溶媒への溶解性を考慮し、長鎖アルキル基を導入した。これらの化合物は、電極間に同じ長さのπ共役パスを有しながらも、多点連結に伴ってその共役パスの数が異なるという特徴を有している。解析手法の発達に伴い単分子電導を明らかにされた報告例は増えつつあるが、このような多点連結、および電導(共役)パスの数に伴う電導性への影響を検討した例はほとんどなく、本系がその一例となり得る。現在、木口准教授(東工大)にこれら分子の単分子電導測定を依頼中であり、これら分子の合成については日本化学会第90春季年会にて発表を行った。 一方、上記の系とは別に、谷口准教授(阪大産研)との共同研究で、光スイッチ単分子のデバイスの構築に取り込んだ。光スイッチ分子には、耐久性があり、かつその開環体と閉環体とで大きくそのπ共役系を変化させるジアリルエテン誘導体の設計・合成を行った。ジクロロメタン中、可視光(532nm)および紫外光(350nm)照射のもと機械的破断接合過程における電導度測定を行ったところ、開環体において2mG_0、閉環体において4m G_0であるという値をこれまでに得ている。
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