現在、ハイパー核物理分野では、「精密な構造研究から、不定性の大きなハイペロン(Y)―核子(N)、ハイペロン(Y)―ハイペロン(Y)相互作用を決定する」という大きな研究目的の基に、実験・理論の強力な協力体制の下、ハイパー核物理研究は着実に発展している。報告者の研究目的は、J-PARCでの生成されるグザイハイパー核、ラムダハイパー核の構造研究を行うことである。これまでのハイパー核分野の実験、理論の両面からの研究により、AN相互作用について、スピン軌道力やスピン・スピンカの望ましい力の大きさが分かってきた。しかし、残されている課題として、荷電対称性の破れの相互作用である。この相互作用の研究は、長い間の懸案であり、早急に解決する課題の一つであったので、平成21年度は、この問題に取り組んだ。つまり、A=7ラムダハイパー核である、^7He_A、^7Li_A、^7Be_AをαANNの4体問題の観点から構造研究を行い、束縛状態としてのエネルギー準位を求めた。このエネルギー準位から、荷電対称性の破れに関わる相互作用が、これらのハイパー核から情報を得られることを指摘した。また、平成21年度に、KEK-E3737実験により、新しくヒダイベントと呼ばれる、ダブルラムダハイパー核が発見された。この核は^<11>Be_<AA>なのか^<12>Be_<AA>であるのか実験では決めることができず、早急に理論的観点からの解析が必要であった。そこで、報告者は、ααnAAの5体構造研究を行い、ヒダイベントは、^<11>Be_<AA>の基底状態の発見であることを指摘した。この研究につい、Physical Review Letterに投稿すべく、論文を執筆中である。
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