本研究は、J-PARCにて行われるK中間子原子核探索実験(E15実験)のアップグレードとなる"thick-GEM (Gas Electron Multiplier)を用いたTPC(Tlme Projection Chamber)"の開発を行う。本年度は主に以下のことを行った。 [(l)thick-GEMの性能評価]幾種類かのthick-GEMをテストし、要求する性能を得られることを確かめた。ここで重要なポイントは、放電をさせずに安定して高いゲインを得ることであるが、GEMに印加する電圧の比を調整することによってこれらの要求を満たすことが可能となった。用いた電圧の比はこれまで一般的に知られているような数値ではなく、今後thick-GEMを用いる上での貴重な技術的蓄積となった。これにより、thick-GEMを実際の実験で使用する手筈が整った。 [(2)読み出しのテスト]実機で用いる読み出しpadを製作し、GEMからの信号を読み出せることを確認した。プリアンプは安定動作に定評のあるSONY-ASD-chipを用いたものを使用することに決定した。 [(3)TPC本体の設計・製作]筺体及びfield-cageを設計・製作した。設計はこれまで実績のあるspring8/LEPSのTPCを参考に行い、E15スペクトロメーターに適合したコンパクトなTPCを製作した。Field-cageにおいては、設計通り高電圧が印加可能なことを確かめた。 以上でTPCを実験に用いる準備が整い、来年度に実際にビームを当ててテストを行う。
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