研究課題
超流動ヘリウム3-B相横波音響インピーダンス測定によって、表面アンドレーエフ束縛状態に起因する表面状態密度の低エネルギー状態の分光的情報が得られることを利用し、境界条件に敏感に依存するアンドレーエフ束縛状態の詳細が明らかとなった。超流動A相においても、音響インピーダンスの温度変化はバルクの寄与では説明できず、表面状態を考慮した理論で説明できることが分かっている。今年度はこの音響インピーダンス測定を、高磁場に拡張し、A1相とA2相の非ユニタリー状態での表面状態を調べた。各相での秩序変数(スピン上向き成分と下向き成分)の成長に伴って、それぞれの相転移温度以下で音響インピーダンスの減少が観測された。しかしその減少量はA1相よりA2相で、はるかに小さなものであった。単純な弱結合の理論では、秩序変数の各スピン成分の結合は存在しない。したがって両相での音響インピーダンスは同様に振る舞い、A相の温度変化のおよそ二分の一の変化をすると予想されている。この音響インピーダンスの異常な振る舞いは、高圧、高磁場でより顕著となった。また低周波の測定ではA2相で増加に転じる振る舞いも見えた。しかし再現性に問題があり、この増加の生じる条件はまだ明らかに成っていない。いずれにせよ、各スピン成分の結合を取り入れないと説明できない、強結合効果の新しい発現を捉えた可能性がある。強結合効果を表面状態の計算に取り入れる理論的な枠組みは現在知られておらず、新たな表面状態の研究を刺激する実験結果となると思われる。
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Journal of Physics : Conference Series 150
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