最終年度となる21年度は、以下の2つの研究を中心に行った。 (1)フェルミ多体系の超流動と密度波状態の共存 昨年の研究を継続し、閉じ込めポテンシャルを持つ引力ハバード模型を用いて、冷却フェルミ原子系に現れる超流動相の性質を調べた。改良された変分モンテカルロ法によってフェルミ相関効果を扱い、基底状態の性質を調べた。動的平均場理論によって予言されていた原子密度波状態と超流動とが共存する「超固体状態」は、単純な2次元系では量子揺らぎの効果で安定化されないことを見出した。しかし、超固体状態への不安定性が非常に増幅されているため、微小な摂動により、この状態が実現する可能性を指摘した。 (2)相関電子系モット転移に対するフラストレーション効果 相関を持つ電子系におけるモット転移について研究を行った。昨年の研究を拡張し、フラストレート電子系の典型例であるカゴメ格子ハバード模型について調べた。動的平均場近似と連続時間量子モンテカルロ法を組み合わせることで有限温度モット転移の研究を行った。その結果、異方カゴメ格子では異方性の大きな繰りこみが起こるため、金属相・絶縁相の間のリエントラント転移が生じることを明らかにした。この結果は、昨年までに得られていた3角格子ハバード模型の結果とも符合しており、フラストレート電子系の一般的な特徴であることが分かった。この結果は、3角格子有機導体で観測されているリエントラント型の有限温度モット転移をうまく説明する。
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