今年度は、昨年度に引き続き、MRIの分解能の向上を図った。特に低温高磁場下で生じる非線形現象とMRIとの関係について調べた。低温高磁場下においては磁化が増大するため、MRIの分解能が向上する。しかし、大きな磁化による双極子相互作用が多重エコー(MSE)やスピン流などの非線形効果を生む。MSEに関しては、180度パルスが均一に照射されればその発生を抑制できる。そのため昨年度に送信RFコイルの大型化による実空間均一度の向上と、共鳴回路の小型化によるQ値の向上を図ることによる送信パルスの周波数空間での均一度の向上を図った。しかし、大きなMSEらしきものが発生したために、その発生メカニズムを調べた。発生していたMSEには低温になるほど大きくなるという温度依存性があった。これは、MSEの大きさが磁化の増大に比例するという事実と合う。しかし、MRI画像作成時の磁場勾配の方向依存性を解析してみると、MSEの大きさに比例するb値と呼ばれる値が、0から負の領域で、MSEの大きさが大きくなるという結果となっていた。そのため、単純にMSEが生じていためにMRIの画像の歪みが生じたと結論づけることができていない。また、低温領域では、スピン拡散の影響が顕著となり、上記であげた単純なMSEのメカニズムが機能していないと考えられる。また、70年代にコーネル大のグループが、低温高磁場領域において出現するスピン流を観測している。これは、NMRによって作られた磁化の勾配によって生み出されたとされている。このコーネル大での状況に近い形のものが、今回の実験においても生み出されていた可能性がある。そこで、現在においても、数値計算を含め解析を行なっている。非線形現象とMRIとの関係の解析に平行して、回転する核断熱希釈冷凍機の建設を進めた。回転部をくみ上げ、回転のテストを行なった。また、低温部の部品を作製した。
|