研究概要 |
本研究の目的は, スーパークリーンな系のひとつRu214酸化物において, 外場で誘起される様々な新奇量子凝縮相や現象を探索し, そして, その状態の特異性を明らかにし, それらの発現機構の理解を進めることにある. 最近, 電場でモット転移を誘起しようというという試みが, いくつか報告されている. しかし, 金属化には数kV/cmとかなりの高電圧を必要とする. また, モット転移近傍にある圧力誘起金属相では様々な量子臨界現象が見つかっているが, 電場誘起金属相を低温まで維持し新奇量子現象を観測した例はまだ知られていない. そこで今年度は, 我々は4d電子系Mott絶縁体Ca_2RuO_4で電場誘起Mott転移とその基底状態の探索を行った. その結果 (1) Ca_2RuO_4に300Kで電場を印加すると, わずか乾電池一個に満たない0.8VでMott絶縁体が金属化する. (2) この絶縁破壊は構造転移を伴う. (3) この電圧は電場にしてE_c〜40V/cmであるが, これはモットギャップと比べて千分の1程度で, 既知の絶縁破壊電場に比べても1〜2桁も小さい. (4) 一旦金属化すると, 金属相はしきい電場E_c以下でも電流が流れていれば安定であり, 低い電圧で低温まで金属状態を維持出来る. そして, この金属相では加圧下同様強磁性が出現することが分かった. この様なおどろくべきほど低電場での絶縁破壊および電場誘起の強磁性は, 4d電子系Mott絶縁体Ca_2RuO_4の他には例がない特異な現象であり, 基礎物理のみならず電子デバイスへの実用化が十分に期待できる.
|