研究概要 |
本年度は、近藤半導体YbB_<12>のエネルギーギャップが、パルス磁場によって約50テスラでつぶれ、金属非金属転移を起こすことの詳細な検証を、主にLu置換たよる転移磁場近辺の変化から行った。このため用いたマグネットはパルス幅36 msecの准等温過程を実現できるロングパルス磁石(最大58テスラ)を中心として、磁化測定のほか、磁気抵抗、ホール効果測定を行った。測定に用いた試料のLu濃度は1%と5%で、磁場方位は[100], [110], [111]と3方向を調べた。その結果次のことがわかった。 (1) YbB_<12>のホール効果により、単純なバンドを仮定した場合キャリヤ数は0-10Tの間で1桁近く増大するが、10-47Tまでは一定の値をとる。半導体金属転移の後は再びキャリヤ数が1-2桁増大する。 (2) Lu置換効果 : キャリヤ数はLu1%置換では1桁増大する。しかし、電気抵抗は3桁も小さくなることから、大きな移動度の変化、または、キャリヤが2種類以上存在することを示唆する。5%置換では磁気抵抗では大きな正の磁気抵抗成分が半導体金属転移磁場にまたがって現れ、一見転移の消失に見えるが、ホール係数は大きな減少を示し、転移が残っていることを示した。 (3) 1K以下で磁気抵抗に量子振動が見られるが、この異方性から磁気励起しモデルを提起し、磁場依存性を定性的に説明することに成功した。 2年目は本格稼働するであろう100テスラマグネットを用いた実験を推進していく。
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