研究概要 |
平成18-19年度の研究で疎水性アニオンであるビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド塩またはトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート塩が優れた潤滑剤となることを明らかにした. しかしこれらのアニオンはハロゲンを含むので過酷な摩擦条件下ではスチールと反応してフッ化鉄を生じ, 腐食摩耗の原因となる. これを防ぐためにハロゲンを含まないイオン液体を種々検討した. なかでもジアルキルリン酸塩およびジアルキルジチオリン酸塩は上記の含フッ素アニオンよりも優れた潤滑特性を示し, 腐食摩耗も起こりにくいことがわかった. X線光電子分析の結果, スチール上にリン酸鉄の薄膜を形成してこれが保護膜として作用して潤滑性を上げていることがわかった. テトラシアノボレート塩は上記含フッ素アニオンよりも劣るもののある程度の潤滑性を示した. この塩はスチール表面と反応して酸化ホウ素を与えることをX線光電子分析で明らかにした. これら非ハロゲンイオン液体の潤滑性はスチール表面上に与える保護膜の性質に依存していると考察した. これまではカチオンとして1, 3-ジアルキルイミダゾリウム塩を中心に評価を進めてきた. 新たに熱安定性に優れるホスホニウム塩を評価し, イミダゾリウム塩に匹敵する潤滑性を示すイオン液体があることを見いだした. ホスホニウム塩もスチール表面上にリン酸鉄を与えることをX線光電子分析で明らかにし, アニオンだけでなくカチオンもトライボ化学反応に関与することを見いだした.
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