研究概要 |
イオン液体はその特異な性質から, 物理化学の分野において様々な手法を用いて研究が進められている。そのなかでも特に注目すべきことは, イオン液体中は液体であるにも関わらずドメイン構造を有すると言われている点である。我々は磁場効果をプローブとしてイオン液体のドメイン構造の実態を解明するとともに, イオン液体中の特徴を生かした特異な反応を見いだす事を目的として以下の研究を行った。 1. イオン液体中でのベンゾフェノンによるチオフェノールからの水素引き抜き反応の磁場効果 : 種々のイオン液体中(TMPA TFSI, P13 TFSI, PP13 TFSI, Emim BF_4)でのチオフェノールからの水素引抜き反応に対する磁場効果を, 30テスラ強磁場下で検討した。また, 観測された磁場効果を統計リュービル方程式(SLE)によって解析した。2. チオベンゾフェノンのチオフェノールからの水素引き抜き反応の磁場効果 : イオン液体中のドメインとしてのケージの強さを調べるために, SDSミセルとの比較を行った。ベンゾフェノンとチオフェノールの反応では, SDSミセル中でベンゾフェノンがSDSから水素を引き抜いてしまうためにプローブとして使用する事ができない。そこで, より反応性が低いチオベンゾフェノンを合成して, SDSミセル中とTMPA TFSI中で磁場効果を比較検討した。3. ベンゾフェノンによるフェノールからの水素引き抜き反応の磁場効果 : イオン液体のドメインの寿命を見積もるために, ラジカル対の寿命が長い反応系(ベンゾフェノンによるフェノールからの水素引き抜き反応)をプローブとして磁場効果を測定した。
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