新たな有機ホウ素系イオン液体として、ο-カルボランアニオンを有するイオン液体の合成に成功した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムハライドに対してn-ブチルリチウムを作用させることによりカルベン種を生成させ、これをο-カルボランと反応させることにより対応するイオン液体を得た。得られたイオン液体の構造は^1H-、^<11>B-NMRスペクトルにより決定した。より粘度の高いイオン液体を出発物質として用いた場合には、収率が大きく低下することが分かった。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンを有するカルボラン型イオン液体は、融点を30.4℃に示し、これまでに知られている他のカルボラン型イオン液体との比較により、ο-カルボランアニオンの導入が融点を顕著に低下させたことが分かった。また、このイオン液体は、ο-カルボランが溶解しないTHF/H_20=1/1(v/v)にも溶解することから、イオン性化合物となることで親水性が増したことも明らかとなった。このような特性は、これらの化合物のBNCT(ホウ素熱中性子捕捉療法)用ホウ素キャリアーとしての検討を考える上でも重要な知見といえる。また、得られたイオン液体のイオン伝導度を交流インピーダンス法により評価したところ、50℃において10^<-6>Scm^<-1>を超える値が観測された。 ο-カルボラン以外に、m-カルボランを同様の手法で導入することも試みたが、この場合には反応は進行しなかった。m-カルボランのpKa値がより高いことが原因と考えられる。
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