研究概要 |
水道水源である河川や湖沼に溶存しでいる揮発性有機化合物(VOCs)を除去する方法を確立することは, 人間生活の健康維持を確保する上で非常に重要な課題である。そこで, 本研究ではこの課題の解決を目指して, 水中に溶存しているVOCsの高効率な除去を目的として, 浸透気化(PV)法に用いる高分子膜の設計合成を化学的、物理的構造の観点から検討した。本研究では, 高分子膜の素材としてポリスチレン(PSt)とポリジメチルシロキサン(PDMS)から成るブロック共重合体(PSt-b-PDMS)を合成し、このPst-b-PDMs膜と種々の有機溶媒に対して高い親和性を示すイオン液体(1-Allyl-3-butyl imidazolium bis(trifluoro methanesulfonyl)imide([ABIM]TFSI))を含有した[ABIM]TFSI/PSt-b-PDMS膜を用いてPV法により希薄VOCs水溶液の透過実験を行った。 PSt-b-PDMS膜のVOCs選択透過性と透過速度はDMS含有量の増加と共に大きくなった。PSt-b-PDMS膜にはミクロ相分離構造が観察され、DMS含有量65 mol%以上ではPDMS層の連続相構造が認められた。また、[ABIM]TFSI/PSt-b-PDMS膜では[ABIM]TFSIの含有量の増加に伴いVOCs選択透過性と透過速度が増し、Pst-b-PDMS膜に[ABIM]TFSIを添加することで水中に溶存するVOCsの選択的透過除去の膜性能が大きく改善されることが明らかになった。PSt-b-PDMS膜中に存在する[ABIM]TFSIは比較的均一に膜内に分布しており、その大きさは[ABIM]TFSIの添加量の増加と共に大きくなっていることがSEM観察で確認された。上記のPSt-b-PDMS膜と[ABIM]TFSI/PSt-b-PDMS膜の膜構造と透過分離特性が物理化学的に考察された。
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