本年度は下記の3つの課題について検討を行った。成果を以下にまとめる。 1. 高感度サブナノ秒過渡分光計の製作 基本的な装置の構築を行い、現在所有するサブナノ秒パルスレーザーの特性に合わせた過渡分光測定装置の設計を行い、基本的な性能を確認した。到達目標であった、過渡吸収での測定可能吸光度変化、0.001、時間分解能800ピコ秒を達成した。酸化チタン単結晶において再結合速度を計測し、イオン液体中の溶媒和電子の計測へと展開した。 2. 界面電子移動反応の計測 上記の装置を用いて、色素増感太陽電池における電荷分離・電荷再生過程について、過渡吸収分光で生成する色素のカチオンや酸化チタン中の電子を分光学的に直接計測する方法をほぼ確立した。通常の有機液体中で得られた結果と比較することでイオン液体の特異な作用についての解明に着手した。 3. 電子移動反応解析に関わる基本データ収集 色素増感太陽電池において、ヨウ素イオンは電子の輸送媒体として機能している。イオン液体中でのこれらの特異な挙動について、吸収スペクトルの計測や、近赤外分光を用いた解析から、イオン対形成を始めて観測した。また、イオン液体が、意外と光に対して不安定であることを見出し、その機構についても過渡吸収分光などから検討した。
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