本年度は下記の3つの課題について検討を行った。成果を以下にまとめる。 1. 高感度サブナノ秒過渡分光計の製作 前年度に構築したサブナノ秒過渡吸収計測に加え、ダブルパルスレーザー励起による過渡吸収・反応中間体の蛍光寿命測定を行うことができる光学系を構築し、ベンゾフェノンケチルラジカルの発光寿命計測へと展開した。 2. 界面電子移動反応の計測 色素増感太陽電池における電荷分離過程について、サブナノ秒時間分解過渡吸収分光で生成する色素のカチオンを分光学的に直接計測した。アセトニトリル溶媒中で得られた結果と比較することでイオン液体の特異な作用について多くの知見を得た。 3. 電子移動反応解析に関わる基本データ収集 色素増感太陽電池において、ヨウ素イオンは電子の輸送媒体として機能している。イオン液体中でのこれらの特異な挙動について、ハロゲンイオン特有のCTTS吸収の計測、光電子放出分光を行い、ヨウ素に加え、臭素イオンについても系統的に検討した結果、イオン液体の溶媒和の特性について多くの知見を得た。さらに溶媒和電子に対する溶媒和との違いを明らかにした。
|