現在の日本の製造業、建築産業を対象に、生産物機能、生産物構成、生産プロセス、生産組織のモジュラー化を記述することにより、日本の技術力、技術特性に関する研究を進めてきている。これは、対象を20世紀後半の日本の技術革新に絞りながら国際間比較、産業間比較の記述を進めることにより、対象となる技術の特性を理解することができる可能性を含んでいるものである。しかし、その日本の技術特性に関して理論的に語られた内容は極めて薄めであった。つまり、日本の技術のどこに強みがあって、先端的に技術革新を行ってきたかが理解されつくしているとは言い難い状況である。 本年度は、基礎的理論を展開すべく、モジュラー化の概念の基本となるアーキテクチャ概念について考察を進めてきた。モジュラー化に関する理解は、構成要素間の関係性に着目したものであり、人工物を観察・理解するときの一つの手法である。特に、国内でアーキテクチャ概念を中心となって展開してきた東京大学の藤本隆宏教授との議論を含み、多くの研究者とのアカデミックな討論を繰り返すことによって、現段階で解明できる最先端の知見を得ることを目指し、研究を進めてきた。 具体的には、日本の建築産業における設計思想をアーキテクチャ概念で考察していくことを中心としながら、自動車産業を含んだ検討を加えてきたところである。特に、建築の設計プロセス・生産プロセスより、その各段階に見られる日本の技術的特性を記述することを進めているところであり、次年度にまとめ上げる方向で検討しているところである。
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