日本の技術革新について、その強みや弱みを明示した理論は極めて薄めである。しかし、過去の事例から多くのことを学び、これから先の発展を実現するためには、技術特性の理解と、強みと弱みの把握は必要不可欠であるといえる。本研究では、日本の技術革新によって生み出されてきた製品の特性を理解するために、製品に関する機能設計に着目し、その基礎的考察を行ってきた。それにより、人工物である製品の創造目的である想定機能の実現について、これまでになかった視点を提供し、日本の技術力によって生み出されてきた製品の機能面の傾向を理解する一助となることを考えたものである。 最終的には、この新しい視点から日本の技術の特性を理解し、日本の技術革新の方向性を提示することを視野に入れ、領域研究全体の報告書「日本の技術革新体系」を中心に成果を収めてものである。特に、この領域研究全体の報告書「日本の技術革新体系」において、当研究は二つの視点を担当した。「技術革新の特性」と「大規模プロジェクト」についてである。日本の技術革新の特性の明確な把握は、高い必要性がある。しかし、検討すべき範囲が極めて広く、また、抽象的要素も多く、一つの章で特性を明確に指し示すことは大変に困難であると考えられる。そのために、「技術革新の特性」については技術革新のある側面を抽出し、その側面における傾向を理解していく内容としている。また、「大規模プロジェクト」については、以下のように考えていったものである。プロジェクトの組織体は、ある目的を達成するため、時限的に存在するものである。その面で、プロジェクトによる技術革新は、固定された組織による技術革新とは異なる側面を持つことになる。21世紀に入り、プロジェクト組織によって進められる技術革新が増加する傾向も認められる。このような中、特に大規模なプロジェクトに焦点を当て、その特性を考えていくものである。
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