本研究課題では、我が国の繊維産業に関する資料やその開発目標の基盤となった膨大な蚕糸関連の資料を基盤とし、繊維系大手各社と連携を取りながら繊維産業の技術革新に関する徹底的な調査と分析を行ない、知識の基盤化を行うことを目的としている。 本年度は、代表的な合成繊維や天然繊維に関して、統計的調査を行なうことともに、他分野との比較を行う事で、繊維産業の技術革新の推移を検討する。 本年度では、代表的な合成繊維であるナイロンとポリエステルに関して、時代の変化に伴う生産量と技術革新意欲を関数とした傾向の考察を行った。 ナイロン繊維においては、昭和40年から45年に非常に大きい技術的イノベーションの可能性が見られることや、ナイロンとポリエステルを比較すると、生産量のピークが、大きく異なっていることがアキラかとなった。さらに、両繊維とも昭和50年代にプロットが右下への減少傾向を示している。これは、技術革新意欲、生産量ともに減少している低迷状態があり、その後、若干持ち直しているものの、生産量に関しては大きく減少してしまっている。この結果は、上述したような中国およびASEANの生産能力の向上が背景としてあることが考えられる。決定的な統計情報を得、本調査の信頼性を向上させるためには、各年度の特許件数や繊維企業毎に立ち上がったプロジェクト数等を新規のパラメータとして採用し、網羅的な件数調査の実施が必要不可欠である。 来年度は本結果を基盤とし、更に詳細な考察を重ね、関連学会などにおいて発表する予定である。
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