本研究課題では、我が国の化学繊維産業に関する資料や、その開発目標の基盤となった膨大な蚕糸関連の資料を用いて、繊維産業の技術革新に関する徹底的な調査と分析を行ない、知識の基盤化を行うことを目的としている。 本年度は、本研究課題の最終年度であるため、昨年度から行ってきた、日本国内の化学繊維、天然繊維の統計的調査を引き続き行うとともに、研究代表者・研究分担者が兼務としている本学科学博物館に収蔵されている繊維関連資料の調査を開始した。 昨年度から行っているナイロン・ポリエステル繊維に関しては、データの正確性についての問題点が見られたため再度検討を行ない、時代の変化に伴う生産量と技術革新意欲を因子とした技術的イノベーションの傾向の考察を行った。ナイロン・ポリエステル繊維と生糸を比較した結果、生糸に関しては現在も工業的な生産が成されていないのが現状であったが、絹の高機能化の研究が推進されており、生糸としては生産高の大幅な増加は見込めないが、完全に淘汰される可能性は低いことが分かった。 ナイロン・ポリエステル繊維に関して、生産量では国際競争力が失われているが現状であるが、高度な製造技術と研究開発によって高機能性を持たせた差別化品種の生産と、従来品よりも良好な品質をアピールすることで、高級品分野でのシェアの確保を行っていることが、我々のデータからも明確になった。 上記の繊維統計調査と合わせて、これまでの繊維産業の発展に深く貢献した繊維機械の保存状況や使用状況に関しても調査を行ない、2件の口頭発表および1件の報告書として発表を行った。 また、本研究計画で得られたこれらの成果を、研究代表者・研究分担者が兼務としている本学博物館での一般公開に向けた準備を行った。
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