2008年度に行った研究を踏まえ、2009年度は北海道炭の石炭窯での利用が広がる1920年代以降を対象にして、有田陶磁器業と東海地方の陶磁器業との間の競争関係を分析した。北海道の登川炭は日本国内で最も陶磁器焼成に適した成分比率を有する石炭であった。このため名古屋、瀬戸、東濃といった東海地方の陶磁器業産地では頻りに北海道より石炭を購入するようになった。これに対して有田陶磁器業では、距離的な問題から登川炭を利用することが困難なのみならず、筑豊炭を有田まで運搬してきた際のコストと、登川炭を東海地方まで運搬してきた際のコストが大差なくなってしまっており、石炭を利用するという意義が喪失されてしまったのである。 こうして、有田陶磁器業では有利な燃料とはされずあまり用いられなかった筑豊の石炭であったが、これに着目をしたのが日本陶器であった。日本陶器では小倉に用地を買い占め、東洋陶器(現TOTO)を設立することになる。また、黒崎窯業なども設立され、北部九州(筑豊)の石炭を用いた陶磁器業は、有田陶磁器業とは別に行われることとなっていくのである。
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