研究概要 |
移動知発現の共通原理を構成論的に考察するためには, 最低限の設定から基本論理を探っていくという, いわゆる「ミニマルデザイン」と呼ばれるアプローチが効果的である. そこで申請者らは, 「単体では移動すらできないような単純な運動機能と物理的実体を与えた結合非線形振動子系」を起点とした研究を進めてきた. 具体的には, 非線形振動子を単純な運動機能を有するモジュールに実装した可変形態型のモジュラーロボットを採り上げ, このロボットに状況適応的に形態を変形しながら移動する, アメーバ様ロコモーションを発現させることを試みてきた. 以下, 本年度に得られた研究成果を具体的に示す : 1. 「能動的適応機能と受動的適応機能の連関様式が持つ生物学的・物理学的意味」を力学系の観点から解明を試みた. 2. 10台のモジュールから構成されるモジュラーロボット実機を設計・製作した. これらモジュールを用いて予備的な実験を行った結果適応性や拡縮性, 耐故障性といった優れた特性が創発することを確認できた. 完全自律分散的な制御手法を用いて変形しながら環境に対応できるモジュラーロボット実機を実現したことの意義はきわめて大きい. 3. 実際の真正粘菌が構築する管構造の意義を, 自律個間の長距離相互作用の調整と考えた仮説を提唱した, そして, 系を構成するモジュール数に応じて長距離相関の度合いを変化させると適応能力が著しく向上することを確認した. このことは, 自律分散制御システムにおける有用な設計指針となりうる重要な知見である.
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