研究概要 |
1) ロボット実験Miuro(ミューロ)は、円形で車輪を2つ持った自走型のロボットで、最大の特徴は両側にスピーカーを持っていることである。Miuroは頭にipodを乗せて、ipodで演奏する音楽をスピーカから流しながら、その音楽を入力として内部状態を変化させ、結果として「ダンス」の仕方を変化させることができる。また、CCDカメラによる視覚情報や4つのIRセンサーや触覚センサーなども搭載している。このロボットにECIのプログラムを搭載し、音楽に合わせてダンスの仕方を自律的に変化させるロボットを発表した。このときに分かったこととして、3番目のロボット時間スケールを導入の必要性が認識された。神経ネットワークの状態遷移の時間スケールが約5msec, ロボットとコンピュータの通信が約100msec、このままやると音楽とまったく関係のない運動が生まれてしまう。そこで、約30msecごとに神経ネットワークの状態をサンプルし、それを使って運動をつくると、ダンスとして音楽と相関を作りつつ、それが自発的に壊れて行くパターン、カオス的遍歴をつくることができる。このサンプルする時間スケールをロボットの時間スケールとよぶ。またこのカオス的遍歴を相互情報量を使って計量することも行った。 2) ハエの実験共同研究者の嶋田正和氏の研究室で、ビデオシステムやガラスケージなどを利用してハエの探索活動の観察実験を行なった。ケージ(47cm平方、深さ2cm)の中に砂糖水をばらまき、ハエがどのようにケージの中を歩き回るかを撮影し、ソフトウェアRを用いることでその探索パターンを統計解析する。特に局所的なAutoregression(AR)法を用いることで、この軌跡の時系列データから、探索運動の自由度の変遷などを解析した結果、その探索行為に異常拡散(記憶効果のあるような)が観察され、さきのロボットと同じように最低2つの運動のスタイルを自発的にスイッチしながら運動することが分かった。また今回、記憶能力が劣るようなショウジョウバエの変異体を用いることで、その拡散パターンがどう変るか、運動パターンの変遷がどうなっているか、それを解析したが、記憶に関してはその運動の振る舞いを変化させることはなかった。また、エサがあるなしに関わらず, ハエは異常拡散を示すことが明らかとなった。また現段階では、2匹のハエの実験は1匹と比べて明らかな違いは見つかっていない。
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