研究概要 |
高い自由度をもつ身体を有す生体がなんらかの運動を行うとき, この自由度を如何に拘束するかが問題となる。その一方で冗長な自由度の活用によって生体は様々な環境に柔軟に対応することができる。本年度は生体が運動時に自由度の(1)拘束と(2)活用をどのように行い, また, (3)どのように多自由度の運動を効率良く獲得しうるかを以下のように考察した。 (1)に関してはヒトの歩行時の遊脚運動は消費エネルギー最小軌道に近い軌道をとっていることを申請者らは示してきたが, 本年度はさらに後進歩行やサルの遊脚運動についても消費エネルギー最小化が強い拘束として働いていることを示唆する結果を得た。一方で, 観測される運動軌道は一定ではなく若干のばらつきが観察される。そこで, (2)サルの二足歩行中の脚軌道のばらつきを分析したところ, 遊脚期後半から両足支持期にかけて, 腰に対する足先の位置のばらつきを小さくするような関節間の協調運動(シナジー)が生じている事がわかった。(3)に関しては, ヒトが運動習熟とともに関節スティフネスを低くしていくことに注目し, このように自由度の凍結と解放を行う学習シミュレーション実験を行ったところタスク達成を早く実現する効率の良い学習を行えることを示唆する結果を得た。
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