研究概要 |
これまでの特定領域研究「移動知」公募研究においては、我々の基礎的段階の研究において発見したヒトの先行制御(proactive control)が動的適応性を最適化していることを実験的及び数理的に証明した。種々の条件において追従実験を行いその普遍性とその限界を示すことが出来れば,本研究領域の「移動知」の目指す基本原理の一つと考えられ、応用範囲の大きい概念となる。 本研究では、ヒト同士の関係に対する動的適応性を明らかにすることを目的とした。相手の位置情報に対する相互追従実験をおこない、複数のヒトの協調運動の特性を測定する。コミュニケーションの原型として他者との適応性は社会性動物の生存にとって極めて重要である。 (主要な成果) 1) コミュニケーションの成立条件の基礎研究としての先行制御メカニズムに必要な誤差訂正運動(フィードバック)と予測運動(フィードフォワード)を分離可能な実験パラダイムを用いて速度パワースペクトルを測定し、両者の特徴を明らかにした。 2) 追従運動の誤差訂正スペクトルは約1Hzを中心とし、0.3Hz-1.5Hz帯に分布するブロードなガウス分布に近いこと。 3) 軌道に存在する構造の通過時間が~1秒よりも長い時はフィードバックが有効に働く。逆にそれより短い場合は全スペクトルを使えなくなるのでフィードバックの働きが悪くなること。 4) フィードフォワード機構は軌道上に構造が存在するとき、その周期性をリズムとして脳内時間を創生し、予測機能に用いていると考えられる。この機能が十分強い場合に先行性が生まれこと。 5) 複数個体の協調運動は、リズムを共有し、且つ、相手に対しての現時点での誤差を注目するよりリズムを使って相手の動きを予測することが最適化にとって不可欠であること。
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