研究課題
適応的運動の社会認知科学的研究として、行為の意思作用感(sense of agency)の異常およびその計算機シミュレーション、さらにはその脳基盤に関する検討を行った。統合失調症の一級症状でみられるような自我障害は、統合失調症に極めて特異的かつ本質的な症状であると考えられており、認知機能障害研究のターゲットとして重要である。しかし、自我障害は主観的体験であり、方法論的に評価することが困難であり、これまで科学的研究の対象とはなりえなかった。本研究では、自我障害を意思作用感の異常と捉え、統合失調症において、主体がボタンを押す動作とこれと連動した刺激のアクションの間に時間遅れ(temporal delay)を含む課題を用いて、その異常を明らかにした。健常群と比べ、妄想型ではdelayが長くても自己をagentと判断すなわちself-agencyの増強(over-attribution)、残遺型ではdelayが少しでもあると自己がagentではないと判断、すなわちself-agencyの低下(under-attribution)がみとめられた。このように、統合失調症では、臨床亜型においてsense of agencyの異常が認められるが、そのパターンは質的に異なるものであった。また、健常例において、同課題を用いたfunctional MRI実験を行い、意思作用感が出現する神経基盤として、頭頂連合野、前部帯状回を含む前頭葉内側部、島皮質を含む前頭弁蓋部が重要であることを確認した。
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