(1) 運動中の脳活動は、運動の結果としての固有感覚処理に伴う脳活動を含むため、解釈には注意が必要である。そこで磁気刺激-fMRIの同時計測システムを応用し、表面筋電図の同時計測と末梢神経刺激により中枢神経系の活動を伴わない筋活動誘発条件を併用することで、運動に伴い発生する固有知覚入力量を補正することのできる脳機能イメージング手法を開発した。結果、運動閾値上の磁気刺激により誘発される脳活動の大部分は感覚処理ではなく誘発性脳活動であることが示された(投稿準備中)。 (2) 歩行の環境適応メカニズムを計算論レベルで理解するための基礎知識を得ることを目的として、歩行・姿勢制御課題中にバイオメカニクス的情報と脳活動を同時に測定することのできるシステムを開発した。歩行・姿勢制御に伴う動作解析のためピエゾ素子を使用した床反力計、歩行や姿勢課題時に懸念される動作ノイズに強いアクティブ電極による8チャンネル筋電図と高速カメラを統合した計測システムを構築した。脳活動の計測系としてトレッドミル歩行時の計測にも応用可能な近赤外線スペクトロスコピー装置を導入し、動作解析と脳活動の同時計測システムを完成させた。 (3) 経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を下肢の一次運動野に適応することにより、健常被験者において下肢の筋力を一時的に促進しうることを初めて示した。神経リハビリテーションへの応用を目指し、tDCSが脳卒中後患者の下肢運動機能に与える影響を検討した。
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