研究概要 |
生化学や分子生物学では生命現象を理解するために細胞の機能を調べ, 構成要素集団の統合機能を明らかにする研究を行っている. 細胞培養における条件を変えて細胞の変化をタイムラプスに記録することができるオンチップ培養システムは様々な分野から必要とされている. 特に, 大腸菌などの細胞をバイオチップ内で熱ゲル(PN工PAAm)等を使用して固定培養し, 単一細胞観察を行うことは遺伝子発現の究明に大きく役立つ技術である. 本研究では(1)オンチップ細胞培養システムのための透明電極であるITOを用いてマイクロ電極をパターニングし, 熱ゲルであるPNIPAAmを用いてマイクロ流路内の細胞をマイクロヒータ上にトラップすることに成功した. この成果は,培養環境を制御する新しいオンチップ培養システム構築に貢献し, 法政大学石浜研究室と連携し, インキュベータなどを使用せずにタイムラプスでチップを撮影しながら低コストで高精度なオンチップ培養及び, 環境変化に伴う個々の細胞のプロモータ活性等の変化を計測することに成功した. また一方で, (2)ITO透明電極をパターニングしたガラス基盤上にポリマー製のマイクロブリッジを加工し, 蛍光蛋白を発現する細胞およびPNIPAAmの混合液を流すことでブリッジ下に高さ制御可能なゲルを成長させることを成功した. この技術により, ゲルの厚みを制御するためのマイクロヒータの精密な温度制御が不要になり, ゲルの透明性を保ったまま細胞を固定し, 自家蛍光なしでS/N比良く単一細胞を観察することが可能になった. また(3)磁気駆動マイクロツールの三次元化や磁性金属を埋め込んだハイブリット化に成功し, 従来の2次元形状の磁気駆動マイクロツールと比較して, より強力な駆動力と強磁性を持ち, かつ従来の柔軟性を併せ持つオンチップツールの開発に成功し, オンチップ温度制御型培養システムにおけるポンプや撹拌機能へ大きく貢献するものとなった.
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