研究概要 |
本年度は、研究計画に従って高度発達型培養筋細胞の改良を行った。まず、培養液中の栄養成分、酸素分圧、電気パルス刺激条件などが筋分化や筋構造発達、筋収縮に及ぼす影響について調べた。その結果、培養液中に含まれるアミノ酸濃度及び電気パルス刺激条件の最適化に成功し、構造、収縮、筋タンパク質発現、代謝など様々な指標において「運動効果」を示す収縮筋細胞を培養細胞系で構築することに成功した(Nedachi et.al., AJPEMa, Nedachi et.al., AJPEMb)。さらに、ストレッチ培養装置による高度発達型培養筋細胞の伸展刺激についても解析を進めた。従来、筋収縮依存的なアクトミオシン系稼働によるATP消費が運動効果の本質であるとされてきたが、驚くべきことに、筋細胞の伸展を促進するだけでAMPキナーゼ活性化、ストレス応答性MAPキナーゼ活性化、そして運動因子産生量の増大など多くの運動効果が見られた(Nedachi et.al., submitted to AJPEM他)。この一連の「バイオ操作」によって得られたin vitroでの培養細胞由来骨格筋を用いた研究結果は、骨格筋の「収縮」の副次作用として捉えられてきた「伸展あるいは弛緩」が運動作用の発現に大きな役割を果たしている可能性を示している。来年度も、現成果をさらに発展・公表していくとともに、培養細胞を用いた新規系の構築による生理・病態モデル作製を鋭意推進していきたい。
|