本年度では、16SrRNA及び21種類のリボソームタンパク質の調製法の検討および20種類のアミノ酸に対応するtRNAの調製系の確立と調製したtRNAの活性測定の2点を実施した。一点目については、21種類のリボソームタンパク質の発現系を構築し、それぞれのタンパク質について可溶化する条件を検討した結果、21種類全てのタンパク質の調製に成功した。16SrRNAについても、野生型リボソームからの精製及び転写調製の両方を行い、2種類のRNAの調製を行った。これらの調製した分子群を用いて30Sサブユニットの再構成を試みたところ、野生型リボソームから調製した16SrRNAを用いた時のみ、タンパク質合成活性のあるリボソーム30Sサブユニットの調製に成功した。また、二点目については、20種類のアミノ酸に対応するtRNAの転写調製系の確立を行い、20種類全てのtRNAの調製を行った。また、転写調製したこれらのtRNAがどのコドンを読み、どのコドンを読まないかを10アミノ酸程度の短いペプチドをコードする鋳型mRNAを用いて網羅的に解析し、tRNAのコドン解読能についての詳細な知見を得た。さらに、これらのtRNAを用いて、実際にタンパク質合成を試みたところ、全てのtRNAの存在下のみ、活性を保持したタンパク質合成に成功した。以上の結果は、無細胞タンパク質合成システムの自己複製へと繋がる重要な基盤となると考えている。
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