本研究では、3次元マルチ光マニピュレーション技術とマイクロ流体制御技術を融合し、複数の細胞を自在に配置・固定する「3次元マルチ細胞操作システム」を構築する。さらに、本システムを用いて、心筋細胞と3次元微細構造を組み合わせたバイオマイクロポンプの開発をめざしている。本年度は、空間光変調素子を用いた光マニピュレーションシステムを用いて、複数の細胞を同時に捕捉し、配列する技術を確立した。さらに、配列した細胞を所望の位置に固定化させる方法として、牛血清アルブミン(BSA)と光増感剤を用いた溶液に、フェムト秒パルスレーザーに集光させることよって、BSAを硬化させる実験を行った。その結果、BSAの硬化に最適な溶液濃度、レーザー描画条件を見出した。また、今後は、固定化した細胞の培養を継続し、細胞機能の評価を行う予定である。一方、心筋細胞を用いたバイオマイクロポンプの実現を目指して、弾性樹脂を用いたチューブ状ポンプチャンバーを試作し、このチューブ状チャンバーに心筋細胞を含有させたゲルを取り付け、バイオアイクロポンプを試作した。十分なポンプ性能はまだ得られていないが、液体が一方向に流れることを確認できた。今後、バルブなどの改善を行い、ポンプ性能の向上を目指す。また、バイオマイクロポンプの性能評価に向けて、マイクロ流体制御素子を試作した。試作したマイクロポンプは、U字型流路に円筒状ロータを配置した形状をしている。実際にロータにドーナツ状の強度分布をもつ特殊なレーザー光(ラゲールガウスビーム)を集光させることで、高速回転することを確認した。今後、バイオマイクロポンプと一体化させて、機能評価実験に活用する予定である。
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