本研究は10lmからmmのオーダーまで対応可能なマルチスケーラブルバイオセンサを基盤として、単一細胞から組織まで対応できる次世代のマルチスケーラブルな細胞工学支援システムの構築を目指して行った。具体的には研究代表者がこれまで開発してきたマルチスケーラブルな化学・バイオセンサ技術と、研究代表者が企業と共同開発した単一細胞の自動回収技術とを統合し、単一細胞(微粒子)レベルのpH、酸素センシング結果に基づく特定細胞(微粒子)の回収を行った。本年度は特に呼吸活性の差異に基づく特定単一細胞の回収を行った。倒立顕微鏡の透過照明ユニットの代わりに、簡易型自動細胞回収装置(セルポータミニ、スギノマシン)を装着し、蛍光画像測定のためにカメラ接続部に、高速共焦点レーザスキャナユニット(CSU-10、横河電機)を装着した。まず倒立顕微鏡に対応可能なマルチスケール酸素センサチップを作製するために、これまで不可能であったウェルの中だけに均一に、酸素センサ膜であるルテニウム錯体含有ナフィオン膜を形成することに成功した。そして酸素濃度変化に基づく検出・回収実験としてまずグルコースオキシダーゼ固定化微粒子の回収を行い、目的の微粒子のみを回収できることを確認できた。そして同様に生死細胞を混合したマウスリンパ球をウェルアレイに配置し計測したところ、生細胞の入ったウェルでのみ酸素濃度の減少を確認でき、さらにその結果に基づき指定した細胞1個のみを回収することにも成功した。
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