研究課題
細胞サイズ人工脂質2分子膜小胞(リボソーム)の新たな光制御技術の開発を行った。光学場は、非接触・非破壊で操作・構造上大きな自由度を持つ操作を可能とする。膜構造変化を誘起させるためには膜を一時的に不安定化する必要があるが、光による膜不安定化因子として光感受性脂質の異性化反応に着目した。生体内では、脂質膜に埋め込まれた高分子の光異性化反応による構造変化が情報伝達等の生理学的機能に密接に関係している。このような生体膜のモデル実験として、リン脂質に光感受性分子を混合した2成分リボソームを構築し、膜構造の光応答を位相差顕微鏡でリアルタイム観察した。UV光照射によるTrans体からCis体への分子の異性化反応により、リボソーム内部の小胞が外側へ輸送される様子が観察された。また、可視光によりCis体からTrans体へ分子形状を戻すことで、外側に送られた小胞が再び内部へ取り込まれた。他にも、楕円体および円柱型リボソームの出芽転移、膜揺らぎの増大などを見出した。すなわち、ナノメートルスケールでの分子形状変化がマイクロメートルスケールにおける膜構造変化を誘起している。また、マイクロマニピューレション技術を用いて、光異性化により膜面積が増減することを確認した。さらに、浸透圧によるリボソーム形態変化プロセスと比較することで、光誘起形態転移のメカニズムを余剰膜面積増減効果により統一的に説明できることを示した。
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