これまで、人工モデル細胞構築のため、組換え膜蛋白質複合体提示したバキュロウイルス(AcNPV)と人工巨大ベシクル(リポソーム、GUV)との融合技術を基礎に情報伝達に与る膜蛋白質複合システムをGUVへ再構成する方法を研究してきた。20年度は、古典的情報伝達経路であるG蛋白質共役型受容体(GPCR)、促進性三量体G蛋白質(Gsα/βγ)、およびアデニル酸シクラーゼ(AC)、すなわち受容器・伝達器・効果器からなる情報経路を、GUV膜上へ再構成し、機能を確認することを目標とした。その結果、これまでに因子ごとのGUV膜提示は確認されていたが、複数のサブユニットでも、提示されることが分かった。また、再構成されたGCPRのうち、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)に対する受容体(CRHR1)については、組換えバキュロウイルスを用いた本方法により作製されたプロテオリポソームが、特異的にCRFと結合することを示唆するデータが得られた。バキュロウイルスシステムで作製した組換えAcNPV出芽ウイルス(BV)上における情報伝達経路を構成する各因子の活性保持については、リガンドなどの特異的結合能と、ACの活性上昇により、個別に確認が既にできている。本年度は、経路構成因子間の伝達機能の保持について検討し、全成分を保持したBV上において、(1)効果器(AC)機能のフォルスコリンによる直接亢進と、(2)伝達器(Gs α : グアニンヌクレオチドに対する特異的結合能をもつGTPase)の非水解性GTPアナログ(GTP γ S)による刺激に応じたAC機能の亢進、が可能であることをACが産生するcAMP(セカンドメッセンジャー)の免疫測定で確認した。今後、ホルモンを用いたAC刺激を確認し、反応物を封入したリポソームへ情報伝達システムを再構成し、外部刺激が内部反応を惹起することが可能なGUVの作製をめざす。
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