研究概要 |
多細胞生物が高次生命現象を営む際に、構成ユニットである細胞同士の相互作用、あるいは細胞と細胞外基質との相互作用は、ダイナミックに変化する。本研究は、生体内環境を反映したダイナミックな場を再構成し、そこで運動する細胞に惹起される細胞接着シグナルを時空間的に計測する技術を確立することを目的とした。平成21年度は、新規解析系の確立と、それを用いた細胞接着シグナルの計測と制御を目指し、次の事柄をおこなった。 まず、平成20年度にひきつづいて、血流中でのダイナミックな細胞接着を解析するためのフロー解析系の構築をおこなった。細胞模倣系の構築により、マイクロメートルサイズのセルフリーな状態で、ずり応力(剪断応力,shear stress)下での細胞接着の計測と制御に必要な構成要素を特定することができた。 また、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy)を用いて、細胞外基質の主要構成成分であるヒアルロン酸のナノメートルスケールでの構造の撮影に成功した。これにより、ヒアルロン酸が粘弾性と保湿性に富む特性を有することを示す特徴的なネットワーク構造をとることがわかった。さらに、ヒアルロン酸とそれに対する細胞接着タンパク質の複合体の構造をAFMにより明らかにした。 以上より、マイクロメートルからナノメートルにおよぶマルチスケールで、細胞接着シグナルを計測・制御するための技術的および情報的基盤が得られた。
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