研究概要 |
将来, 人工細胞を構築するなど, 合成生物学的な研究を進めるために, 再構成された無細胞タンパク質合成系は, 中心的な役割を果たすものと期待される. タンパク質合成系はバクテリアと真核細胞とでは著しく異なっているので, 真核細胞型の再構成タンパク質合成系の実現が望まれている. コムギ胚芽由来無細胞タンパク質合成系が, それを適切に維持すれば2週間以上反応を触媒し続けることからわかるように, その成分は極めて頑丈である. そこで, コムギ由来のタンパク質合成系を再構成するための第一歩として, 安価に入手できるコムギ胚芽からタンパク質合成に関わる因子を精製した. まず, 伸長因子のうち, eEF1AおよびeEF2を, 従来法および, 本研究で改良した方法によって精製した. 一方, 従来法を少々改変した方法で, 通常の無細胞タンパク質合成系に用いられる胚芽抽出液からリボソームを調製した. これらと, ポリウリジル酸, アミノアシル化した酵母のフェニルアラニンtRNAを混ぜて, ポリフェニルアラニンの合成が効率よく起こることを確認した. 一方, 昆虫由来の翻訳開始因子を必要とせずに翻訳反応を起こすと報告されているmRNA配列からの翻訳開始が, 開始因子なしでは極めて低い効率でしか起きないことが確認された. 以上より, さらに, 翻訳開始因子を調製して再構成系を目指すための土台ができた.
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