近年になり、SUMO修飾を含む生体分子の修飾現象「分子修飾」がゲノムと細胞の機能制御の骨子として様々な生命現象に関わることが分かってきた。欧米での研究層は飛躍的に厚くなり、先端的な国際学会の多くで関連するテーマが定期的に取り上げるようになってきている。しかしながら、分子修飾研究を細胞工学的な観点からとらえた研究例は少ない。本研究では、SUMO架橋反応に関わる酵素とその基質タンパク質を操作することで、新機能を有するタンパク質ポリマーをデザイン・合成する技術(SUMOタンパク質操作)、核オルガネラの膜をSUMOにより特異的に修飾し、核の極性化・固定化を行う技術(SUMOオルガネラ操作)、SUMOを用いたタンパク質架橋ベクターの構築とエピジェネティックな遺伝子発現を調節する技術(SUMOエピゲノム操作)の3つのバイオ操作に関する提案を行う。[1]SUMOタンパク質操作 : ポリマーの基軸タンパク質の同定と生化学的な解析、ポリマーに有用な物質の探索、あるいはポリマー化反応を大腸菌やその他の宿主細胞で試みた。[2]SUMOオルガネラ操作 : 研究代表者らが開発したin situ SUMO架橋修飾を用い、核オルガネラの形状を検出した。[3]SUMOエピゲノム操作 : SUMOのN末端領域にヒストンメチル化・脱メチル化酵素、アセチル化・脱アセチル化酵素などのクロマチン修飾酵素を融合させ、細胞内で直接タンパク質に架橋することで、遺伝子発現パターンを変化させることを目的とする。今年度は、SUMOのN末端変異体を作製し、エピゲノム操作用のベクターを開発した。
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