プロティンセラピーを志向した機能性分子・タンパク質の細胞選択的細胞内導入を目的とし、ファージディスプレイ法による細胞選択的細胞膜透過ペプチドの同定と、本ペプチドを活用した初代混合グリア培養系での物質導入の検証を行い、以下の結果を得た。 1、ニューロンおよびアストロサイト選択的細胞膜透過ペプチドの同定 環状7merのランダムペプチドを提示するファージライブラリーを用いて、アストロサイト細胞株A1、およびニューロブラストーマNB2aに結合するペプチドリガンドを探索した。試行錯誤の末、それぞれの細胞に強く結合する新規配列を有するペプチドを得た。さらに、複数の細胞株を用意して結合特異性を調べた結果、両細胞種に選択的に結合することがわかった。また、これらはミクログリアにはほとんど結合しなかった。よって、目的とする3種の中枢神経系細胞に結合するリガンドが得られた。 2、共培養系におけるキメラペプチドによる選択的細胞死の制御 得られたペプチド配列にミトコンドリア膜破壊ペプチドを連結させたキメラペプチドをペプチド自動合成機で作製した。まず、ミクログリア選択的リガンドのキメラについて調べた結果、ラット初代混合培養に本ペプチド(10〜50μM)を処置すると、ミクログリアに選択的な細胞死が起きていることが観察された。 よって、共培養系における細胞選択的物質導入のための基本ツールが準備できた。
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