研究概要 |
病原性のバクテリアであるマイコプラズマは細胞の片側に膜突起を形成し、固形物の表面にはりついて動く'滑走運動'を行う。この運動は他の細胞運動では見られないユニークなメカニズムで起こる。本研究は、この運動を単離精製したタンパク質を用いて再構成することを最終的な目標としている。本年度は、この滑走装置上に多数存在し、モーターのタンパク質からの動きを"あし"のタンパク質に伝えていると考えられる521kDaのGli521タンパク質に注目した。単離したこのタンパク質は自身で3量体を形成し、みつまた形状を示した。また"みつまた"の中心部は比較的硬くて安定した構造だった。分子はアミノ酸のN末端側から、oval, rod, hookの3つのドメインにわかれていた。細胞上ではhookの部分で"みつまた"が形成され膜にアンカーされており、その細胞内部の部分にモーターのタンパク質などが結合している、そして逆側のovalで"あし"のタンパク質、Gli349に結合している、と考えられる。また、動きを阻害するモノクローナル抗体の研究から、Gli521分子が広範囲にわたって動きを持っていることが示唆された。これらの結果から、以下のようなモデルが示唆された。すなわち、「モーターのタンパク質によってみつまたの中心部が回転する。rodはクランクとして機能し、ovalが"あし"のタンパク質を引っぱることで滑走運動が起こる。」
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