研究概要 |
本研究の目的は, 「誘電泳動を利用する細胞操作技術の電気回転現象への応用」により細胞を大量・一括・迅速に制御・回転させ細胞膜表面の受容体の発現量と表現型(フェノタイプ)を解析する手法を確立し, さらに, 解析・識別した細胞を分離捕捉および回収できる簡便なシステムの構築にある. 本年度は, 2枚の交互型マイクロバンドアレイ電極基板を直行させて配置した誘電泳動デバイスを作製し, 負の誘電泳動により細胞を交差点にドット配列させることに成功した. また, この際に4本の電極に印加する周波数を変化させることにより, ドット配列パターンを連続的に変換できることを示した. 初期導入濃度を最適化することにより, 1つの交差点に1個の微粒子または細胞を捕捉できる. さらに, 位相を調節することにより細胞をグリッドに集積化させ, さらに回転させることが可能であることを示した. 蛍光染色した細胞を導入し電気回転させたところ, この回転速度が細胞種に依存するため, 細胞種および細胞に発現している膜抗原の同定ができる可能性を示せた. マイクロ流路構造と電極を組み合わせた細胞の分離デバイスを開発し, 微粒子のサイズ別分離および赤血球と白血球の分離を行った. また, 誘電泳動による迅速な微粒子および細胞の操作技術を免疫アッセイに応用した. 従来の酵素免疫測定(ELISA)では測定に2時間程度を必要としていたが, 誘電泳動を利用することにより, これと同等の感度を有する計測をわずか3分で達成できた. 現在, 誘電泳動によるリボソームのマニピュレーションを行っており, 新たな計測システムの確立を目指して研究を遂行している.
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