本研究の目的は、生体の組織形成に関する基礎的知見の獲得、さらには創薬スクリーニング、ハイブリッド人工肝臓への応用が期待されている肝細胞スフェロイドを対象に、組織形成観察、刺激応答計測を実現するマイクロTASを創製することである。具体的にはマイクロ旋回流のメカニクスおよびスフェロイド形成に関するメカニクスを明らかにするとともに、組織形成、刺激応答計測アレイを実現する。かつ、このマイクロTASをプラットフォームとした組織研究により、システム細胞工学における細胞から組織までのスケールを補完する。本年度は、マイクロチャンバ形状(チャンバ径、高さ、流路径、流路位置など)および流体の諸条件(流量、圧力など)と生成されるマイクロ旋回流(流速、圧力、せん断力)の関係をシミュレーションならびに実験により導出した。実験においては、細胞と同程度のサイズを有する蛍光粒子を用いたマイクロPIVにより流速および流線を計測した。その結果、旋回流を生成するためのマイクロチャンバサイズおよび流速の条件が導出された。マイクロチャンバの径、ならびに高さおよび流速の関係は、旋回流生成において極めて深く関わっていることが判明した。スフェロイド形成するための細胞として、Hep-G2細胞を選びその培養系、ならびに長時間の還流培養システムを構築した。培養液だけでなく細胞を還流するシステムの構築に、還流中の細胞の固着ならびに凝集を防ぐ機構、さらにはペリスタポンプにより発生する脈動流を低減する機構を導入することで、初めて成功した。スフェロイドを形成するための旋回流条件を導出し、肝細胞スフェロイドの形成に成功した。
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