研究概要 |
顕微鏡下の細胞操作に代表されるマイクロマニピュレーションは, 現在, 視覚情報のみに頼って行われている. マイクロマニピュレーションに伴う微小空間の力・音情報を正確に検出し, 操作者に伝達することができれば, 操作性は極めて向上すると考えられる. 本研究の目的は, 触・聴覚情報を付与することで, 操作性が高く, かつ安価で信頼性の高いマイクロマニピュレーションシステムを開発することである. しかし, 微小空間の力・音情報を正確に検出することは容易ではなく, 従来の手法では, 高コスト化や装置の信頼性の低下を招く. そこで本研究では, マイクロツール間の接触を検知して, その情報を操作者に触・聴覚呈示するマイクロマニピュレーションシステムを開発した. 提案システムは, 実体顕微鏡と2対の油圧マイクロマニピュレータに加えて, マイクロツール間の接触を検知するための回路と, 触・聴覚呈示のためのボイスコイルモータを有する. 検出されたマイクロツール間の接触情報に基づいてマイクロマニピュレータ操作子に固定されたボイスコイルモータを駆動させることにより, 操作者は指先と耳でマイクロ領域における接触情報を得ることができる. この手法は,操作対象である物体と操作ツールとの間の力・音情報を直接的に検出するものではないが, ある種のマイクロタスクにおいては, 操作性の向上をもたらす有益な情報を操作者に提供することができる. さらに提案システムでは, 操作者の身体像を投影するためのマイクロハンド模型がマイクロツールに取り付けられており, 没入感を生み出す工夫がなされている. 提案システムを用いて, 微小領域における適切な位置と力のハイブリッド制御を必要とするマイクロ描画タスク実験を行った結果, 操作者に描画に伴う摩擦感をも感じさせることに成功し, 操作性を向上させることができることを確認した.
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