研究概要 |
血管内皮前駆細胞(EPCs)による血管修復作用のin vitroにおける再現を目指し,wound scrapeモデルを用いて,EPCsの細胞運動をタイムラプス付蛍光顕微鏡下で全過程を可視化した.その結果,EPCsはwoundに対し,ラメリポディアを形成しながら遊走していくものの,一定の場所においてwoundに平行にラインを形成することが明らかとなった.今のところ,何がこのラインの位置を規定しているかは明らかでないが,こうしたライン形成能が血管発生、血管修復に大きく寄与している可能性が考えられた.EPCsと成熟血管内皮細胞(ECs)をマトリジェル上でそれぞれ培養すると,EPCs単独で管腔形成能はほとんどなく,一方で細胞運動能は非常に活発でマトリジェル上で動き続けているが,ECsはすぐに全体に管腔を形成する.EPCsとECsの共培養系では,EPCsとECsが共に管腔を形成することが確認された.マイクロ流路を用いたEPCsの循環動態観察では,壁面をEPCsがローリングしながら流れていく様子が観察され,生体内での微小循環におけるEPCs動態を生体外で再構築できると考えている。さらに,これまでの研究において我々は,アディポネクチンがPI3K/Rac1/Cdc42の経路を介してEPCsの遊走能を有意に増加させることを明らかにしたが,アディポネクチンを添加するとEPCsにおけるラメリポディア形成が有意に増加することも明らかとなった.これらの結果は,すべてEPCsの血管発生,血管修復の一部の過程を観察していると考えられ,今後これらを統合したEPCsの働きを観察するシステムを開発していきたい.
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