電子素子の微細化限界を超えるBeyond CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)では、CMOSとは異なる原理に基づき、CMOS性能を上回る素子により、集積回路を構築することを目指している。Beyond CMOSに向けた研究は、現状では単素子としての動作実証のレベルの研究が多い。本研究では、Beyond CMOS素子として金属内包フラーレンを用いた分子素子を構築することを目指している。分子素子を用いた集積回路の構築を目指した研究開発は、1. 基本素子動作の安定化、2. 集積化プロセス技術の開発、3. 素子特性のばらつきを含めた信頼性の確保、4. 回設計ツールの整備などいくつものクリアすべきステップが存在する。本研究では、ナノギャップ電極に金属内包フラーレンを導入した分子スイッチ素子において1の分子素子の基本素子動作を実現し、基本素子動作の安定化をはかり、2の集積化に耐えうる分子素子を構築するためのプロセス技術を開発することを目的としている。今年度は、無電解金メッキで5nm程度のギャップを有するナノギャップ電極を無電解メッキの自己停止機能を用いて作製した。数nmの直径を有する金ナノ粒子をナノギャップ電極に埋め込んだ素子において、電流-電圧特性を測定したところ、常温で明瞭なクーロンブロッケード特性が得られた。超高真空STMを用いて同様の金ナノの走査トンネル分光(STS)測定を常温で行うと、図2と同様なクーロンブロッケード特性が明瞭に観察された。さらに、ナノギャップ電極素子におけるクーロンブロッケード特性の理論フィッティンダパラメータは、STSの測定結果より求めたパラメータと同じ値となることを明らかにした。
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