分子レベルの微細構造の材料解析の第一原理計算コード開発をした。研究代表者が提案する局所的密度量を用いて結合状態と物性量の関係に注目して研究した。平成20年度は対象系に電流が存在する条件での量子状態解析コード、電場存在条件での局所的電場応答の解析コード、スピンに働くトルクの局所的な値の計算コードの開発をした。 電流存在下の量子状態計算コードは電気伝導を表現する。本研究では新たに電流の作る磁場が媒質に与える効果、媒質内の電磁場が電流に与える影響を考慮した。電磁場、電流を共にベクトルポテンシャルとして取り入れ媒質-電流間の相互の影響を調べる。電流・電場・磁場を独立に取り扱う限り相互の影響は複雑だが、ベクトルポテンシャルなら統一的に記述できる。この計算は各点でのベクトルポテンシャルを得るのに全領域からの寄与が必要なため膨大な時間がかかるため、フーリエ変換を用いて積分する。このときゼロモード発散の問題点があるが、我々は光子に微小な有効質量を導入し、無限遠からの寄与を実質的にカットオフして有限の解を得る方法を開発した。 電場存在条件での局所的電場応答の解析コードは、研究代表者が提案したストレステンソル理論による誘電率・分極率といった局所量・テンソル量を用いて界面を解析する。このコードは初期段階の動作確認が完了し、種々の条件で酸化膜材料の計算を行った。 スピンに働くトルクの局所的な値の計算コードは電子スピンのダイナミクス記述が目的である。このコードは、スピントロニクス分野での応用に加えスピンホール効果等の基礎的現象の解析等の多方面で重要である。開発第一段階として相対論的分子系計算での波動関数に対して局所的トルクを計算するコード開発した。具体的には、研究代表者が提案したスピントルクとツェータカの計算コード開発を行った。これらの量により定常状態でスピンにトルクどう作用して平衡状態にあるかを調べられる。
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