本研究では、従来の熱的なプロセスが抱える技術課題に対しブレークスルーをもたらす技術の開発を目的とし、これまでの研究成果をさらに発展させて、ポストスケーリング技術(新材料系におけるナノヘテロ構造形成)に整合したナノ表面改質技術の確立を目指し以下の研究を行った。まず、ドーパントに対するアニール特性の差異を調べるため、Si(100)基板にBイオンを注入した試料とBF2イオンを注入した試料について、超短パルスレーザーを室温で照射後のシート抵抗を測定した。Bイオンを注入した試料では、超短パルスレーザー照射により、室温でも低抵抗まで活性化させることが可能であることを示している。一方、BF2イオンを注入して作製した試料では超短パルスレーザーを照射しても高抵抗のままであり、照射するレーザーのフルーエンスが高い領域に入ってくるとむしろ抵抗が上昇した。これらの結果は、イオン注入により非晶質化した層へのレーザー照射により、非晶質相の結晶化は可能であるものの、室温での低温プロセスであるが故に、通常の熱的なアニールプロセスではフッ素原子の増速拡散によりBF2イオンを注入した領域からフッ素原子は深い領域に拡散して問題とならないのに対し、本課題で研究している超短パルスレーザー照射によるナノ表面処理プロセスでは、レーザー照射領域での再結晶化過程ににおいてフッ素原子の増速拡散を顕著に生じる程度まで高温になっていないために、フッ素原子が高濃度に残留し、低抵抗化を妨げている可能性を示唆している。このことは、本研究でのプロセスが室温での低温プロセスであり、さらに熱的な拡散を抑制可能であることを示しているものと考えている。
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